シナリオ2失われた日常 幻魔プルシキを倒せ
待ち合わせ場所に現れたのは数人の男女だった。俺が近づくと一人の女の子の方が俺の方に歩み出た。
「あんたが通信してきた…?」
「ええ、満仲渚よ。よろしく、柏木勇二君」
名前を呼ばれぎょっとしたが、満仲渚と名乗った女の子は俺と同じ東京神代高校の三年生、つまり同級生だった。知らない子だったが、なるほど見慣れた制服を着ている。
「私A.G.Eのホストコンピュータをハッキングしていて偶然悪魔召喚プログラムを見つけたの」
ハッキングという単語がセンセーショナルだったが、A.G.Eが悪魔召喚プログラムを持っていたということが引っかかった。昨日の研究員と名乗った男が悪魔を呼び出したのはプログラムを使用したからに違いない。
渚と話していると同級生なこともあって幾分緊張が和らいだ。
次に渚は皆に自己紹介を求めた。
「…宗方晴臣だ。特に話すことはない」
「おいおい。情報交換のために集まったんじゃないのか?」
まともに口を聞いたらそれかと呆れて男に問うと、金髪の男が割って入った。
「まぁいいじゃないか。人にはそれぞれ己を縛る規律があるものさ」
「あなたは…?」
「ボクはキルフォート・エイブリーだ、よろしく。 新世界の象徴であるNEOTOKYOを見るためにドイツから来たんだ」
上手に日本語を操ってはいるが、確かにキルフォートと名乗った男は彫り深で真っ白い肌をしていた。
「召喚プログラムはどこで?」
渚が訊くとキルフォートは注目を受けながら薄く笑った。
「夢に出てきたアドレスにアクセスしたら手に入ったんだ。きっと神の思し召しだね」
やがてもうひとりの男がやや大きな声を出した。
「俺は白岳洋一。一応科学者の端くれだ。今日はこのプログラムを今後どう運用していくかについて話し合いたいと思っている」
俺と渚は得体の知れないこのプログラムを運用しようと言う男の考えにそもそも疑問を持った。晴臣は怖ければ捨てろと言い捨てた。最後にキルフォートが、使用するかどうかは自分自身で判断すればいいと前置きしたあと、「ボクとしてはこのプログラムを全世界に発表したほうがいいと思ってる。新世界の秩序を乱しかねないからね」と言った。
即座に白岳が噛みついた。「こんなにすばらしいものをみんなで共有しようってのか?馬鹿げてる!俺は反対だ!」
全員が白岳を冷めた目で見つめた。白岳が主張する独占運用というのは、この場にいる者が共謀してこのプログラムを目的のために用いようということらしい。しかし俺と渚、言うまでもなくキルフォートも召喚プログラムの生み出すかもしれない利益に目をギラつかせる白岳には加担しかねた。この中で唯一積極的にプログラムを使いそうな晴臣さえ他人は勝手にしろと言う。傍目に見ても晴臣が求めるものと白岳が求めるものが違うのは明確だった。
「ここは民主的に多数決だね。恨みっこなしということで」
キルフォートが流暢に告げたとき、白岳が豹変した。
「大いなる意思のもとに…貴様らに天罰を…ぐ、ご…がぁぁぁっ!!」
ピカッと光ったかと思うと白岳の身体が小さく爆ぜた。中から這い出てきたのはやはり異形の悪魔だった。俺は昨日も同じものを見たことを思いだしていた、夢なら早く醒めてくれ。
「悪魔に体を食い破られるなんて…これも召喚プログラムの力なのか?」
「私たちもこうなる可能性があるっていうの?」
混乱をきたす俺たちに白岳改め幻魔プルシキが「死ね愚民共!」と叫んだのに対し晴臣が「下らん選民論者が」とピシャリと言うと心の揺らぎは収まった。皆分かっていた、戦わねばならない。
昨日今日の奇怪な事態はやはり親父がいなくなったことと関係があるのか、とふと考えついたが、渚がプルシキに向かって踏み出す音で思考は途切れた。
「彼はもう…人ではない」
「道を塞ぐものは切って捨てる」
「ボクもこんな所で死ぬわけにはいかないな」
「やるしかない…か」
暗黙のうちに俺たちは並び立った。
俺がオルトロスを召喚すると、渚は回復魔法を覚えた妖精エルフを、晴臣は腕力に優れた闘鬼ブッカブーを、キルフォートは自在に空を移動する霊鳥ヤタガラスをそれぞれ召喚した。皆強力な悪魔だった。無論プルシキに呼び出された雑魚は簡単に片付いた。
俺は橋の上でプルシキと敵対した。 緑の象の姿をしたプルシキの攻撃は意外なほど弱かった。象の手を振り払いカウンターをお見舞いすると一発で沈み込んだ。昨日の戦闘経験が生きたらしい。
俺たちは汚れを払いながらビル群の中に戻った。出会って間もないが、互いの顔を見ると安心した。
俺は思っていたことを切り出した。
「俺はこれからこのプログラムを解析しようと思う。親父に関係があるかもしれない」
親父は悪魔召喚プログラムを知っていた。A.G.Eは悪魔召喚プログラムを所有していた。そして親父が失踪してから悪魔が現れたのだった。
「じゃあ一週間またここで集まろう。それまでにボクも色々と調べておくよ」
キルフォートが言い、渚と晴臣が同意した。
俺たちは種々の予感を胸に、新ハチ公前で彼らと別れた。
(レベル11)
キルフォート爆弾魔伝説開幕戦。
ぽいぽいほうりこむよ。でもエティエンヌが毒舌野郎だったからか、キルフォートはかわいげがありますね。スタッフの愛感じる。晴臣は…あれは…
白岳グラなしでかわいそうです。しかもプルシキ
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